運命の相手に「兄」を選んだ。
 運命の相手に「弟」を選んだ。
 互いに血の繋がりがあることを認識していても、二人とも「運命」を互いに定めてしまったことが一つの狂いを生んだ。


 兄が作った箱庭の中で弟は生き続ける。
 壊れてしまった玩具を添えて、現実から隔離して、優しさだけに触れられるように仕組んだ箱庭療法。
 それは今も変わらないまま……二人は時間を共に過ごし続けるだろう。


「もしも何かあったら無理やりでもいいから髪の毛を切ってね」


 柔らかな音程で弟は若草色の髪の毛を伸ばす宣言をした。
 そのもしもがなければ良かった。
 けれども狂いの中に生まれた子供を愛した第三者の存在によって、均衡は崩れ、彼は髪を切った。
 過去を断ち切るための行動。
 兄は苦々しく笑って、「長い髪のキミも好きだった」と告げた。


 運命の相手に選んだのは「兄弟」。
 愛してるよ。愛してるよ。


 そして今日も若草色の髪の毛を持つ彼は都合の悪い記憶を失い続けながら、兄が護る箱庭の中で笑っている。


2020.02.09



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