■ 2・「私の心に突き刺さった三日月が抜けないの」


 満月の夜よりも手ごわい三日月の夜。
 光は淡すぎて足元を暗く重たいものへと変えた。土の香りがやけに鼻に付くなと思いながら草地を抜ける。妙に据えた匂いに顔を顰めながらその場所を早足で駆けた。


 一人で歩く道は何処か寂しげだとヒトは言う。


 空を見上げれば其処にあるのは三日月。
 歩かなければいけない道のりに仕掛けられた罠を巧妙に隠し、けれど目的地だけは薄く照らし出す。陰鬱な気分に陥りながらも歩く。
 ほら、目の前にあるのはただの路。


「――――」


 お月様が自分の名前を呼んだ気がした。
 何故呼ぶのか分からなくて、空を見上げながら問いかけた。


 「何故」と自分に問う自分と。
 「何故『何故』と問うたのか」と自分に問う自分と。
 自分の足を止める金色の光は何処となく、『ヒト』に似ていた。


 足元にぽっかりと空いた心の穴は幼い自分を吸い込もうと今か今かと待ち構えている。
 けれど「もう一度呼んで」と両手を空に伸ばして強請る子供はまだその穴に気付かなかった。






(ジェンドならば三日月=スマに)
(レヴィならば三日月=花音に)
(ウィステリアならば三日月=キュールに)

(心理描写オンリー。いわゆる一つの転機)
(幼い頃、其れが本当に良いことなのかすら区別出来ずにいた彼らに)






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